しょうが 生姜 Ginger
生姜は「生で食べる」のと、「乾燥させたり、加熱して食べる」のでは、その健康効果が異なります。生姜のもつ薬効を理解して、目的に合わせて摂取できたなら、健康増進・風邪知らず! …生姜の達人を目指しましょう。
先ずは流通する生姜の種類から…
ひね生姜 …十分成長した根の部分
収穫最盛期は晩秋で、掘り出した根茎を貯蔵したもの 通年で出荷され、最もポピュラーな生姜です。堅く、繊維質で辛味も香りも強く、新生姜に比べて成分含有量も多いので、薬味や吸い口 匂い消しにと多用してその薬効も上手に利用したいところです。 表面につやがあり、ふっくらとした肉厚なものを選びましょう。
生姜の保存に一番適した環境は気温15℃ …10℃以下になると低温障害をおこし有効含有成分も減少してしまいます。かくいう私はクッキングペーパーにふんわり包んで野菜室に置いています。
新生姜 …種生姜の上にできた根茎
出回る時期はハウス栽培のものは6~8月頃 新生姜の爽やかな香りとシャープな辛味は蒸し暑さが増す季節に喜ばれるため、ハウスで促成栽培されたものが多く流通していますが、自然のままに畑で育つ露地ものは10月後半~11月前半に収穫期を迎えます。
シャキシャキとしたみずみずしい歯ごたえが身上 色が白くて繊維が柔らかく、辛味は比較的おだやかで、甘酢漬けなどに利用されます。 葉の緑が濃く、根が白いもの選びましょう。
葉生姜
新生姜が生育し始めて小指ほどの大きさになった根茎を、葉をつけたまま収穫したもので、初夏に多く出回ります。茎元が鮮紅色になるのが特徴で、カリカリとした食感で口をさっぱりとさせ、ほのかな刺激が食欲を増進させてくれる季節の味。お酒のおつまみにも好まれますね。
『谷中生姜』が有名ですが、その呼び名の由来は「谷中本村」と呼ばれた現在の荒川区西日暮里付近で多く取れたことから…
当時の谷中本村は豊富な良水に恵まれ、水はけが良く、生姜栽培にたいへん適した土地でした。そこで採れる味が良い生姜は、収穫がちょうどお盆の時期にあたるため、商人や職人、谷中の寺社などのお中元の贈答品に利用しされて「盆生姜」の異名もあったほど。谷中本村:現在の谷中とは少し離れた場所にあったようですが、川は地下水路となり、ビルが林立 繊維問屋さんが並ぶ現在の西日暮里の町並みからは隔世の感があるお話です。
成分と効能
生姜パワーを正しく理解してその効力を上手に引き出すために、有効成分とその特性を知ることから始めましょう。
健康効果を発揮してくれるのは、生姜独特の辛味の成分である 『ジンゲロール』・『ジンゲロン』・『ショウガオール』です。
『ジンゲロール』は生の生姜に含まれ、強い殺菌効果があり、血液とともに体内を巡ると、末梢の血管を広げるため、体内の熱を取り除き、体の芯を冷やします。ジンゲロールの持つ強力な殺菌・解熱効果は、風邪のひき始めや悪寒がする時に期待したい作用。一方解熱作用によって身体の芯を冷やしますので、冷え性改善には逆効果になってしまいます。
一方乾燥や加熱により『ジンゲロール』が変化してできるのが『ショウガオール』や『ジンゲロン』と呼ばれる成分で、これらの成分には血流を促進させ、体を芯から温めてくれる効力がありますから、冷え性や肩こりの改善などに効果的です。
以上から、
☆ 風邪の予防やかぜにひき始めには生食で…
☆ 冷え性改善や肩こり、頭痛を和らげたい時は、乾燥生姜か、加熱しての摂取がお勧め…
と分かります。
* 生食、加熱、乾燥と、簡単で美味しく生姜がいただけるレシピはこちらから…
それぞれの成分のより詳しい薬効や健康効果は以下をご参考になさってください。
生姜使いの達人はお薬いらず! 生姜パワーは神さまからの贈りもの!
ジンゲロール … 生の生姜に含まれる辛味の成分
*血管を拡張させて血液の巡りをよくします … 手足など体の末端まで熱が伝わって温まり、末端冷え性を改善 血行不良による肩こりや頭痛・むくみの解消にも効力を発揮
*免疫力を高めます… ジンゲロールが血管に入ると排除すべき侵入物と勘違いして免疫細胞である白血球が増えるため、免疫力がUPします。
* 解毒・殺菌・消炎作用 があります… 細菌に直接攻撃をしかける積極行動派
* 自律神経を刺激 し、 新陳代謝を活発にすることで、発汗作用を高めます。
* 小腸の脂肪吸収を抑えるため、 ダイエット効果が期待できます。
☆ジンゲロールは加熱したり空気に触れると効力が低下しますから、生姜を〝生〟で摂る時は直前にすりおろすようにしましょう。
☆ お寿司に添えられる「ガリ」はジンゲロールの殺菌効果により食中毒を防ぐとともに、生ものを食して体を冷やすことを防ぐ理にかなった食べ合わせです。 先人の知恵と工夫に感服
ジンゲロン … 乾燥や加熱によりジンゲロールが変化してできる辛味の成分で、加熱調理した生姜や乾燥生姜、生姜パウダーに含まれます。
* 強力な発汗作用 … 生姜を摂取してすぐに一瞬カッと体が熱く感じるのはこの作用によるものです。
* 血行を促進して体を温めます。
* 強い抗酸化作用 … お肌や体組織の老化を予防します。
ショーガオール … 乾燥や加熱によりジンゲロールが変化してできる辛味の成分で、加熱調理した生姜や乾燥生姜、生姜パウダーに含まれます。
* 胃腸の壁を直接刺激して血流を高め、深部の熱を作り出し、胃液の分泌を促進して、消化吸収を助け
ます。
* 強い抗酸化・消炎効果・鎮痛効果・抗腫瘍効果 … 生のまま摂取するより効力が高まります。
* 血行を改善するため、 新陳代謝の促進が期待できます。
* 体内脂肪の分解を促進するため、ダイエット効果が期待できます。
=以上「乾燥生姜や加熱された生姜は体の深部を温める」働きがあることがわかります。
シネオール …30種ほどある生姜の香り成分の1つ
キリリとした芳香は臭覚を刺激し、唾液や胃液の分泌を促しますので、食欲の増進はもちろん消化吸収にも効力を発揮します。食材の生臭みなどの消臭や消化器官粘膜の消炎にも薬効を発揮します。
健康効果を逃さない調理法
有効成分が多く含まれているのは皮と中実の境界部分なので、調理の際は出来るだけ皮を剥ず、気なる時はスプーンや包丁の背でこそげ落として使います。
摂取時のポイント
① 免疫力upを望むなら生食で摂取しましょう。
② 冷え性には加熱摂取をお勧めします。ショウガオールの働きで体の深部が温まります…
* 風邪をひいたら「ぬるめ」の生姜湯が効果的…「ぬるめ」 にすることで生の生姜に含まれるジンゲロ
ールの抗菌作用や血流促進作用と、加熱によってできるジンゲロンやショーガオールの発汗や消炎作
用も得ることができます。そんな一挙両得レシピ『葛根ジンジャーティー』はこちらから…
③ 効力を逃さないために擂り下すのは食べる直前に 皮は削がないで摂取しましょう。
過ぎたるは害になることも…
過剰摂取刺激物になり、口内や喉に炎症が起きたり、胸やけが起きたりします。さらに胃液の分泌を促進させますから、胃酸過多気味の人が生姜を摂るとさらに胃液が分泌されることで胃の粘膜を荒らしたり、胃痛を引き起こすことがあります。ご自分の体に合わせて上手に摂取を心がけて…
乾燥生姜・ジンジャーパウダー
冷え性改善には、生の生姜ではなく、乾燥生姜を摂取するのが効果的です。料理や飲み物に入れて幅広く使えますから、積極的に使って上手に健康効果を利用しましょう。自家製を作ることもできますし、市販品も購入しやすい値段で販売されています。
漢方ではそのまま乾燥させたものを『生姜』(しょうきょう)、蒸してから乾燥させたものを『乾姜』(かんきょう)とよび、薬局製剤の過半数に使われています。