親子鮎🐟🐟
稚鮎はカステラ生地で求肥を挟んで鮎に見立てた可愛らしい形に、焼きゴテで表情が描かれた夏の訪れを告げる和菓子です。求肥のもっちりした食感と柔らかいカステラ生地の組み合わせや、ほんのりした甘味が初夏らしく、鮎のお顔が描き手によってさまざまなのも楽しみのひとつですね。
清流として名高い岐阜県の長良川、京都府の鴨川や桂川の銘菓としても知られ、その呼び名も地域によって「若鮎」、「登り鮎」「稚鮎」「かつら鮎」…とさまざま 姿や表情も個性豊かで、見比べ、食べ比べるのも楽しいものです。
誕生物語を紐解いてみますと、時は明治41年 (1908年)和菓子職人玉井経太郎は京都と東京で修行を積んだのち、岐阜市湊町 長良川のほとりで「玉井屋本舗」を開業します。その開店にあたって考案したのが、『登り鮎』です。
長良川では古くから飼いならした鵜を使って鮎を獲る鵜飼が行われ、平安貴族や戦国武将たちが遊興行事として鵜飼見物をしてきた伝統があります。「登り鮎」は地元の歴史を映したお菓子として人気を得、しだいに全国の鮎の産地にもと広がっていった…
こうして近代化が進む明治期に誕生した登り鮎ですが、「玉井屋本舗」さんによりますと、求肥をカステラ生地でくるむ製法は岡山を代表する和菓子の「調布」からヒントを得たものとのこと
調布は小麦粉と卵、砂糖を練り合わせた生地を薄くのばしてカステラ状に焼いて求肥餅をくるんで作られます。玉井経太郎はこの調布を鮎の姿に似せて作り、文字の代わりに顔を焼き込んで、郷土愛あふれる『登り鮎』を作り上げたのです。
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「調布」の考案者は間野与平という倉敷出身の菓子職人さんと伝わります。この与平さん幕末の京都に店を構えていたところ元治元年1864年 長州藩と京都を守る公武合体派軍とが、御所付近で衝突 戦闘の最中に長州勢が藩邸に火を放って逃走したため、その火が市中に広がり、三万戸が消失という大惨事に発展します。この火事で焼け出され郷里の岡山に帰った与平さんは、京で学んだ製法からカステラに求肥餅をくるむお菓子を考案し、「調布」と命名したのです。
この火事で焼け出され郷里の岡山に帰った与平さんは、京で学んだ製法からカステラに求肥餅をくるむお菓子を考案し、「調布」と命名したのです。その名の由来は律令制下の租税である租庸調のうち、その土地の特産物を納める「調」として納めていた反物(布)の形と求肥を生地で巻いたお菓子の形が似ているから…
京の戦禍で与平さんが倉敷に戻らなければ、「調布」誕生はなかったかも?そしたら「登り鮎」は? と想いを巡らせ、飛鳥や奈良時代にかけての税制の名残が幕末の戦禍をへて、「調布」を名に持つ和菓子となり、明治時代そこから縁が紡がれて「登り鮎」が誕生した… そんな背景に想いを巡らせると、それぞれのお菓子が愛しくなりませんか^^
ちなみに「調布」の名を持つ場所も、元をたどれば、租庸調の制度で布を納めていたことに由来するそう…
親子鮎
《材料》8尾分 1尾分の生地分量を3等分して焼くと、小鮎ちゃんが3尾作れます🐟🐟🐟🐟
卵 2コ
砂糖 80g
片栗粉 適量
はちみつ 大1
みりん 小1
水 50ml ( 1/4cup)
薄力粉 120g
重曹 小さじ1/2
《求肥》
白玉粉 50g
砂糖 70g
*焼き串:焼き目をつけるための金串 プロの方は鉄製の専用串を使われますが、私は100円ショップで求めたステンレス箸を使用しています。
《生地をつくる》
① ボウルに卵を溶きほぐし、砂糖を加えて泡立て器でよくすり混ぜます。
② さらに、はちみつ・みりん・水も加えてよく混ぜます。
③ 薄力粉と重曹を合わせてふるい入れ、粉けがなくなるまでよく混ぜ合わせ、ラップをして冷蔵庫で30分ほど休ませましょう。
《求肥》をつくる
④ 耐熱ボウルに白玉粉を入れ、水90mlを注ぎます。よく混ぜて5分間ほどおき、白玉粉に水を含ませます。
⑤ 砂糖を加えてよく混ぜます。
⑥ ラップをして電子レンジ(600W、700w)に1分30秒間かけ、よく混ぜます。
これをさらに2回繰り返し、求肥が半透明になり、粘りが出てくるまでよく混ぜます。
⑦ まな板に片栗粉を茶こしでふるい、⑥求肥をのせて上からも片栗粉をふるい、求肥を
10×12cm程度の横長の長方形に成形します。
⑧ 粗熱が取れたら包丁で縦8等分に切りわけ、ふんわりラップかけておきましょう。
《焼く・成形する》
⑨ テフロン加工のあるフライパンを弱火にかけ、生地(45mlを目安に)を流し入れ、10×12cm 程度のだ円形に整えます。表面にポツポツと気泡が出て、周りが乾いてきたら裏返し、1分間ほど焼きます。
*生地 大1:15ml でミニ鮎ができます。=大人鮎1尾分(45ml)で3尾のミニ鮎に!
⑩ ラップの上に、最初に焼いた面を下にして取り出し、求肥を1本のせます。
ラップごと生地を半分に折りたたみ、ラップに包んだまま粗熱が取れるまでおいて、成形します。
金串の先のほうを直火に当てて熱し、十分熱くしてから生地に押し当てて模様をつけます。
*ステンレス箸は熱が冷めやすいので、都度ガス火にかざして真っ赤になるまで熱くしてから描くと、くっきり!